「面接は企業とのお見合い」
よく言われる言葉ですが、税理士事務所の採用もこれが全てです。
どれだけ知識があっても、どれだけ資格を持っていても、この「相性」が合わなければ採用には至りません。
逆に言えば、相性さえ良ければ、未経験でも十分にチャンスがあるということです。
では、私たち面接官は具体的に相手のどこを見て「相性がいい」と判断しているのでしょうか?
うっかりやってしまいがちなNG行動から、好印象を与える準備のコツまで。
採用の裏側を少しだけ覗いてみましょう。
面接官は何を気にしている?
面接官は、限られた時間の中で「この人と一緒に働けるか」を必死に探っています。
特に重視しているポイントは大きく3つです。
事務所のカラーに合うか
求人募集から面接、そして入社後の教育。企業の採用活動には、多大な時間とコストがかかっています。
そのため、「すぐに辞めてしまわないか」はシビアに見られます。
長く活躍してもらうためにも、スキル以上に「事務所の雰囲気に馴染んでくれる人かどうか」を見極めているのです。
コミュニケーションが円滑にとれるか
税理士事務所はデスクワーク専門だと思われがちですが、実は「サービス業」の側面が強い仕事です。
数字を合わせるだけでなく、クライアントの悩みや意図を適切に汲み取れるかが重要。
そのため、会話のキャッチボールができる「対人スキル」が求められます。
「本気度」が見えるか(自分で調べるクセがあるか)
「ここで働かせてください!」 その熱意が本物かどうかは、発する言葉の端々に表れます。
またこの仕事は、未知の案件を自分で調べて解決していく力が必須。
そのポテンシャルを測るためにも、「事前に事務所のことをしっかりリサーチしてきているか(=調べるクセがついているか)」は、重要なチェックポイントです。
税理士事務所ならではの評価基準
一般的なマナーに加え、この業界特有の「見られているポイント」があります。
繁忙期を乗り越えるタフさ
税理士業界は、繁忙期と閑散期がはっきりしています。
特に確定申告時期などの繁忙期は、どうしても業務量が増えます。
そのため、「忙しい時期でも粘り強く業務を遂行できるか」というタフさや、過去の経歴から見える課題解決能力が評価されます。
クライアントに信頼される「人柄」と「説明力」
お金というデリケートな問題を扱うため、信頼関係がなければ仕事になりません。
将来的に「先生」の代わりとして事務所の顔になり得るか、以下の点がチェックされています。
- 第一印象(清潔感・明るさ)
クライアントに不快感を与えない身だしなみや、話しかけやすい明るい表情ができているか。 - 論理的な会話
専門用語を並べるのではなく、自分の言葉で分かりやすく説明できるか。質問に対して的を射た回答が返ってくるか。
臨機応変な対応力(マニュアル以外への対応)
実は面接官も、その場の流れでアドリブの質問をすることがあります。
履歴書に書かれていないことを聞かれたとき、言葉に詰まったり、自分の意見が出てこなかったりすると、
「準備したことしかできないのかな?」
「クライアントの不測の事態に対応できるかな?」
と不安になってしまいます。
落ち着き・度胸
面接は誰でも緊張するもの。私も同じ立場なら、手先が冷たくなるほど緊張するでしょう。
しかし、そんな状況でも落ち着いて対応しようとする姿勢は、社会人として好感が持てます。
多少の言い間違いや失敗は気にしません。挙動不審になりすぎないよう「深呼吸」を意識して臨んでください。
これまで印象に残った「採用事例」
ここからは実際の面接で「素敵だな、一緒に働きたいな」と感じ、採用に至った事例をご紹介します。
① 不確実なことは言わない(誠実さ)
Aさんは、分からないことや不確実なことに対して「分かりません」「確証はありませんが」と正直に伝えられる人でした。
面接ではつい自分を良く見せようと、知ったかぶりをしたくなるものです。
しかし、この仕事で誤った情報を伝えることは、クライアントに不利益をもたらす致命的なミスに繋がります。
「言葉の重み」を理解している姿勢が評価されました。
② 質問の意図を汲み、軌道修正できる
Bさんは、珍しい経歴の持ち主。
経歴は異色でしたが話してみると非常に落ち着いており、こちらの質問意図を正確に理解して返答してくれました。
未経験でしたが動じない穏やかな笑顔と、論理的な受け答えから「この人なら成長できる」という期待値で採用となりました。
③ 相手を不快にさせない「聞く力」
Cさんは、とにかく人当たりが良さが特徴でした。
単に明るいだけでなく、ネガティブな話題もポジティブに変換して返せる会話力が抜群。
「この人と一緒にお仕事ができたら、事務所の空気が良くなりそうだな」と面接官全員が感じ、採用即決でした。
残念ながらご縁がなかった事例
お喋り過ぎる・落ち着きがない
明るいのは長所ですが、限度があります。
ペラペラと喋りすぎてしまうと、「口が軽いのでは?」「守秘義務を守れるかな?」と心配されてしまいます。
自分の意見がない・会話が続かない
質問に対して「はい」「いいえ」だけで終わってしまうなど、コミュニケーションが深まらないケースです。
「報連相ができないかも」「クライアント対応は難しいかも」と判断されてしまいます。
「なぜこの事務所なのか」が見えない
志望動機が薄く、「どこの事務所でも良かったのでは?」と感じてしまうケース。
やはり定着率への懸念から、採用は見送られがちです。
準備しておくこと
最後に、面接前にこれだけはやっておきたい3つの準備をお伝えします。
1. 企業分析(業種理解)
事務所のホームページやSNS、Googleマップの口コミなどをチェックしましょう。
事務所が大切にしている価値観や、入社後にやりたいことを整理しておくと、説得力が増します。
2. 自己分析
面接は、企業とのお見合いの場です。
自分のことを相手に知ってもらうために、強みや弱み、譲れない条件などを言語化しておきましょう。
交渉事もスムーズに進みますよ。
3. ひたすら練習
ぶっつけ本番の面接は、心臓がいくつあっても足りません。私は4回の転職活動を経験しましたが、それでも毎回緊張しました。
おすすめは、声に出してのロールプレイングです。
家族や友人に相手役を頼むのも良いですし、今はChatGPTなどの生成AIを相手にするのも有効です。
「厳しめの面接官になりきって」
「志望動機を深掘りして」
と指示を出せば、手軽に何度でも練習相手になってくれます。
まとめ
ここまで面接官の視点やNG事例をお話ししましたが、最後にお伝えしたいのはこれだけです。
面接はあなたも事務所を選ぶ場だということ。
無理に自分を良く見せて採用されても、入社後のミスマッチで苦労するのはあなた自身です。
「この事務所の雰囲気は好きかな?」
「所長の考え方に共感できるかな?」
そんな視点で、面接当日は対話を楽しんでみてください。
税理士事務所の仕事は、信頼と人間関係がすべて。
だからこそ小手先のテクニックではなく「この人たちと一緒に働いてみたい」という素直な熱意が、最強の武器になります。
あなたにとって、良いご縁がありますように。

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